
リノベーションは、まさに新しい人生の始まり
こちらは以前、老舗の人形・おもちゃ店だったそうですね。
奥様:はい。主人は四代目。明治創業、100年余り続く人形屋でした。雛人形や皐月人形などを主に扱っていました。
そうですか。街の歴史を創ってきた大きな存在だったかと思います。
閉店される時は、大変な覚悟があったのではないでしょうか。
ご主人:そうですね。それはもう色々悩みました。自分が代々受け継いで来た店を閉めていいものか。もう少し頑張れるのではないかと。とは言え、年齢的なものもあり、体力への不安は常にありました。

そんな中、閉店に踏み切ったきっかけは何でしたか。
ご主人:息子の想いですね。人形屋を守ることも大事だけれど、「1日でも長く、元気に生きていてほしい」と言ってくれたのです。その言葉が私の背中を押してくれました。
そしてそれが、今回のリノベーションにつながったと。
ご主人:はい、新しく生まれ変わった家で、快適にゆったりと過ごしてほしいと息子が提案してくれたのです。本当に嬉しかった。ただ店を閉めるだけじゃない、新しい暮らしを始めるんだと気持ちがパッと明るくなりました。最後に、最高の花道を用意してくれたんです。全てが報われたと思いました。
長年刻んできた、
歴史と思い出を大切に
蔵独特の立派な梁や土間、趣がありますね。
奥様:はい、古き良き時代の面影を上手く残せたかと思います。住居でありながらも「見世蔵」を残しているのは、ここ栃木市の「蔵の街」としての街づくりに貢献できればいいなと思ったからです。

店を支え、歴史を刻んできた柱と梁。なかなか出会うことのない経年美。
営業こそしておりませんが、表の「やまとや」の看板や漆喰の壁もきれいに塗り直しました。通りに面したかつての店の入り口には、ウインドウを設けて人形を飾ったりもしています。
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代々受け継がれてきた店の看板。化粧を施し生まれ変わりました。
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歴史と風格を感じる鬼瓦。
歴史ある街並みに溶け込みながら、街と関わる。自然と人が集まるコミュニテイにもなりそうですね。
奥様:そうなんですよ。家を新しくしてから、本当にたくさんの友人、知人が訪れてくれて。にぎやかで楽しいです。土間に友人達の絵や詩を飾ったりして、喜ばれていますよ。
ご主人:店は閉店しても、街や人との繋がりは、そのまま受け継ぐことができたなと思っています。そこが本当にありがたいですね。